自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)は、運行業務・荷役業務・安全衛生の3分野を、学科30問(○×式)と実技20問(三択)、合計80分で測る試験です。合格には学科・実技それぞれで正答率60%以上が必要です。学習は全日本トラック協会が公開する公式テキストを土台に進め、本ガイドの練習問題で積載量の計算や出発前の判断のしかたを練習してください。なお、試験に合格しても在留資格が自動的に与えられるわけではありません。
試験のしくみと合格基準
この試験は日本海事協会がCBTまたは紙のテストで実施し、学科30問と実技20問、合計80分です。学科・実技それぞれ正答率60%以上が合格です。
実施主体は一般財団法人日本海事協会です。実施方法は、コンピュータで出題・解答するCBT方式か、ペーパーテスト方式のどちらかです。学科試験に加えて、図やイラストで示した状況から正しく判断する力をみる実技試験があります。試験は日本語で行われ、必要に応じてルビが付きます。
問題数と形式は、トラックを含む全試験区分で共通です。学科試験は30問の○×式、実技試験は20問の三択方式で、試験時間は学科と実技をあわせて80分です。合格基準は、学科と実技のそれぞれで正答率60%以上です。
実施要領は、実務経験2年程度の人が準備なしで受けた場合に7割程度が合格できる水準を示しています。これは受験者の合格割合についての説明で、正答率70%が必要という意味ではありません。合格基準は学科・実技それぞれ60%以上です。
実施は年複数回で、日本国内と海外で行われます。実施時期や会場は国土交通省と日本海事協会が協議して決め、専用のウェブサイトで案内されます。
出典: 自動車運送業分野特定技能1号評価試験実施要領(国土交通省物流・自動車局、令和6年12月) — 試験概要・試験水準・試験の範囲等・合否の基準・その他必要事項
出題範囲は3分野:運行・荷役・安全衛生
トラック区分の試験範囲は、学科・実技とも「運行業務」「荷役業務」「安全衛生」の3分野です。
実施要領では、トラック運送業の試験範囲をこの3つに限定しています。同じ自動車運送業分野でも、タクシーとバスの区分では「接遇業務」が入ります。トラックではこれが「荷役業務」に置き変わるのが大きな特徴です。旅客を扱わない分、荷物の積み下ろしが学習の中心になります。
運行業務では、出発前の点検や点呼、運行管理の流れ、事故・故障・遅れへの対応などを学びます。荷役業務では、荷物の種類に合った積み付け、荷崩れ防止、偏荷重や過積載を防ぐ知識を学びます。安全衛生では、健康管理や作業時の注意などを学びます。
学習の優先順位をつけるときは、全日本トラック協会の公式テキストの章立てと対応させると分かりやすくなります。対応を表にまとめました。
| 出題分野 | 学ぶ内容の例 | 公式テキストの該当章 |
|---|---|---|
| 運行業務 | 日常点検、点呼、運行管理、事故・故障・遅れへの対応 | 第2章 運行業務 |
| 荷役業務 | 積み付け、荷崩れ防止、偏荷重・過積載、ロープ掛け | 第3章 荷役業務 |
| 安全衛生 | 健康管理、職場の心構え、積卸し作業時の注意 | 第1章・第3章 ほか |
出典: 自動車運送業分野特定技能1号評価試験実施要領(国土交通省物流・自動車局、令和6年12月) — 試験概要・試験水準・試験の範囲等・合否の基準・その他必要事項; (外国人向け)トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト 公開ページ(全日本トラック協会) — テキスト公開・章立て・英語版・ベトナム語版の案内; トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト(全日本トラック協会、PDF本文) — 第1章 トラック運転者の基本、第2章 運行業務、第3章 荷役業務、第4章 危険予知トレーニング
公式学習テキストの入手方法と使い方
全日本トラック協会が本試験専用の学習テキストを公開しています。全体版と分割版があり、英語版とベトナム語版も用意されています。
テキストは全日本トラック協会のウェブサイトから入手できます。第1章「トラック運転者の基本」、第2章「運行業務」、第3章「荷役業務」、第4章「危険予知トレーニング」の4章構成です。内容の修正情報も同ページで公開されています。
テキストは日本語にルビが付き、外国の方の学習を想定して作られています。2025年3月には英語版とベトナム語版も公開されました。日本語に不安がある場合は、まず母語版で内容をつかみ、日本語版で用語を覚える進め方ができます。
使い方の一例です。まず全体を一度通読して流れをつかみ、その後は章ごとに区切って学びます。第4章のKYT(危険予知トレーニング)シートは、信号機のある交差点や踏切、雨天の高速道路など、19の場面について危険を予測して考える練習になっています。実技試験で問われる状況判断の練習としても役立てられます。
出典: (外国人向け)トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト 公開ページ(全日本トラック協会) — テキスト公開・章立て・英語版・ベトナム語版の案内; トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト(全日本トラック協会、PDF本文) — 第1章 トラック運転者の基本、第2章 運行業務、第3章 荷役業務、第4章 危険予知トレーニング
安全運転の基礎:見えない危険を考える
トラックは運転席から見えない場所があるため、見えている情報だけで周囲が安全だと決めつけないことが大切です。道路や車両、天候の条件に応じた安全確認を学びましょう。
公式テキストでは、車間距離、交差点、踏切、歩行者などへの注意を扱います。数値の目安を覚えるだけでなく、前車の動きや視界、路面状態が変わると危険も変わることを理解します。
危険予知の練習では、今見えているものと、遮られて見えないものを分けます。「見えないので誰もいない」とは判断できません。実際の運転は、交通ルールと会社の指導に従い、安全を確認して行います。
練習問題
【オリジナル紙上練習】停車中の大型車の陰に歩道の一部が隠れています。歩行者が見えていないという理由だけで、「陰には誰もいない」と判断してよいでしょうか。見えている事実と、まだ確認できないことを一つずつ答えてください。
答えを見る
判断してはいけません。事実は「大型車によって歩道の一部が見えないこと」です。まだ確認できないのは「隠れた部分に歩行者がいるかどうか」です。
視界が遮られていることと、人がいないことは別です。見えない部分に人がいる可能性を考えて安全確認につなげます。この問題は危険を読み取る練習で、具体的な運転操作の指示ではありません。
出典: トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト(全日本トラック協会、PDF本文) — 第1章 トラック運転者の基本、第2章 運行業務、第3章 荷役業務、第4章 危険予知トレーニング
練習問題①:積載量の計算で過積載を防ぐ
各荷物の重さを合計し、車両の最大積載量と比べます。合計が上限を超えたら、荷物の数を減らす必要があります。
荷役業務では、車両の最大積載量を超えて積む「過積載」を防ぐことが求められます。公式テキストでも、過積載による事故の要因や防ぎ方が章の中心に置かれています。ここで、実際の計算のしかたを練習問題で確認しましょう。
練習問題
練習問題(架空の例です):最大積載量2,000kgのトラックがあります。重さ20kgの段ボール80個と、重さ150kgのパレット1枚を積み込みます。(1)積載量の合計は何kgになりますか。(2)この状態から、さらに段ボールを20個追加できますか。できる・できないと、その理由を答えてください。
答えを見る
(1)1,750kgです。(2)追加できません。
(1)段ボールは20kg×80個=1,600kg。パレット150kgを加えると1,600+150=1,750kgとなり、上限の2,000kg以内に収まります。(2)段ボールを20個追加すると20kg×20個=400kg増えて、1,750+400=2,150kg。最大積載量2,000kgを超えるため過積載で、追加はできません。なお、(1)が上限内でも、この計算は重量の確認だけであることに注意してください。軸重などほかの基準への適合は、この計算では確認していません。
出典: トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト(全日本トラック協会、PDF本文) — 第1章 トラック運転者の基本、第2章 運行業務、第3章 荷役業務、第4章 危険予知トレーニング
練習問題②:出発前の点呼で異常に気づいたら
安全に関わる異常に気づいたら、遅れが出ても運行を続けず、運行管理者に報告して点検・整備を受けたうえで判断します。
トラック運転者の一日は、業務前の点呼から始まります。点呼では体調や車両の状態を報告し、運行管理者の指示を受けます。ここで車両の異常に気づいたとき、どう行動すべきかを練習しましょう。
練習問題
練習問題(架空の例です):運転者Aさんは、業務前点呼のとき、ブレーキの効きがいつもより悪いことに気づきました。今日は届け先が決まっている荷物があり、出発が遅れると予定に間に合いません。Aさんの取るべき行動として最も適切なものを選んでください。①様子を見ながら走り、途中でさらに悪くなったら止まる。②遅れても出発前に運行管理者へ報告し、点検・整備を受けたうえで判断する。③自分で別の車両に荷物を積み替えて、そのまま出発する。
答えを見る
②です。
①は、制動の不安がある車両で公道を走り続けることになり、重大事故につながるおそれがあります。③は、車両を代えた運行を運転者が自分だけで決めるもので、運行の管理と判断は運行管理者の役割です。②のように、点呼で気づいた異常を報告し、点検・整備と運行の可否を仰ぐのが正しい流れです。予定より遅れる場合の対応としても、会社への報告と指示受けが基本です。
出典: トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト(全日本トラック協会、PDF本文) — 第1章 トラック運転者の基本、第2章 運行業務、第3章 荷役業務、第4章 危険予知トレーニング
学習を進めるコツと受験までのステップ
公式テキストを土台に、3分野ごとに覚え、練習問題で判断力を確認します。日程・会場・受験料は日本海事協会の専用ウェブサイトで最新情報を確認してください。
学習の軸は、全日本トラック協会の公式テキストです。まず第1章から第3章までを通読し、その後は苦手な章に戻って繰り返します。第4章のKYTシートを使って場面ごとの危険予測を練習すると、実技試験に近い形の復習ができます。
申し込み関連の情報の確認先は決まっています。実施要領では、試験日、試験会場、受験予約期間、受験料とその支払方法、当日の本人確認書類などは、日本海事協会の専用ウェブサイトに掲載されることになっています。受験料の金額は、実施費用や試験実施国の所得・物価、他の試験の受験料などを考えて決められるため、具体的な数字は専用サイトで確認するのが確実です。
受験に向けて、次のチェックリストで準備を進めてください。
- 試験実施日に有効な運転免許(日本・外国どちらでも可)を持っているか確認する。
- 国内受験の場合、在留カード番号(ない場合はパスポート番号)を用意する。
- 公式テキスト(必要に応じ英語版・ベトナム語版)を入手する。
- 運行業務・荷役業務・安全衛生の3分野を、試験範囲に沿って学ぶ。
- 本ガイドの練習問題で、積載量の計算と出発前の判断のしかたを確認する。
- 日程・会場・受験料を日本海事協会の専用ウェブサイトで確認する。
出典: 自動車運送業分野特定技能1号評価試験実施要領(国土交通省物流・自動車局、令和6年12月) — 試験概要・試験水準・試験の範囲等・合否の基準・その他必要事項; (外国人向け)トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト 公開ページ(全日本トラック協会) — テキスト公開・章立て・英語版・ベトナム語版の案内
出典
事実確認:
