農業技能測定試験1号には耕種農業と畜産農業の2種類の試験があり、どちらにも日本語の確認・評価が含まれます。まず自分の従事する分野の試験を決め、公式学習テキスト(試験の範囲に準拠)を自分の言語で入手します。耕種なら発芽三条件・pH・肥料三要素・施肥量の計算、畜産なら家畜の観察と記録、そして両方に共通する作業指示の聞き取り練習を、本稿の例題で手を動かして固めてください。出題数や合格基準などの運営情報は、必ず公式サイトの「試験の概要」で確認します。
試験の全体像:まず耕種か畜産かを選ぶ
農業技能測定試験は、特定技能という在留資格で日本の農業現場で働く外国人を対象に、農業の知識・技能と日本語力を確認する試験です。耕種農業と畜産農業の2種類があり、自分が従事する分野の試験を受けます。
試験は一般社団法人全国農業会議所が、農林水産省の事業として2019年度から実施しています。日本の農業現場では労働力不足が深刻で、即戦力となる外国人材を受け入れる枠組みとして特定技能制度が創設されました。
合格すると、制度上「農業に関する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有している者」として認められます。ただし、実際に日本で働くためには、適切な受入機関に雇用されることが別に必要です。合格だけで在留や就労が自動的に決まるわけではありません。
公式ページが現在案内する実施要領では、学科・実技(日本語の確認を含む)で60分、採点対象外の問題を含め約70問です。実技はイラストや写真による判断問題です。合否は全国農業会議所が定める基準点で判定され、この要領に具体的な合格点は示されていません。
出典について: 学習用テキスト – 農業技能測定試験(1号試験) — asat-nca.jp/asat1/textbook; 試験の目的とメリット – 農業技能測定試験 — asat-nca.jp/asat1/overview/purpose; 全国農業会議所 農業技能測定試験実施要領(公式ページ掲載) — https://www.nca.or.jp/upload/procedure_for_the_asat_jp.pdf
日本語の確認・評価は試験の一部
耕種・畜産のどちらの試験にも、日本語能力を確認・評価する問題が含まれます。農業分野の日本語テストとして、作業の指示を聞いて理解する力が重視されます。
農業の現場では、音声による指示を受けて作業することが求められます。そのため、文字に頼らず日本語を聞いて理解できる力が必要で、特に数字を含む表現や動詞の変化形を聞き取れることが重要だと公式の日本語テキストに書かれています。
日本語テキストは、市販教材「みんなの日本語」でいえば8課程度の学習経験がある人を想定しています。また、試験では漢字の習得を前提にした問題は出題されないと明記されています。
出典について: 試験の目的とメリット – 農業技能測定試験 — asat-nca.jp/asat1/overview/purpose; 農業技能測定試験 日本語テキスト 耕種農業・畜産農業共通 日本語版(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_JP_jpn2.pdf
公式テキストで学ぶ範囲を確認する
公式サイトでは、耕種農業・畜産農業・日本語の3種類の学習テキストを、日本語を含む多くの言語でダウンロードできます。テキストはいずれも「試験の範囲に準拠」しています。
耕種農業テキスト(日本語版Ver1.1、2022年3月改訂)は、日本農業一般、耕種農業一般(成長・作型・種まき・育苗・かん水・土づくり・肥料・防除など)、安全衛生、稲作作業、畑作・野菜作業、施設園芸作業、果樹栽培作業、農作業の用語で構成されます。
畜産農業テキスト(日本語版Ver1.2)は、畜産の特徴(酪農・肉用牛・養豚・養鶏など)、家畜と飼料の基礎知識、日常の家畜の管理作業の3部構成で、確認問題も付いています。日本語テキストは両試験共通で、文字・数字・名詞・動詞・形容詞・あいさつなどの練習と音声ファイルが用意されています。
まず受けたい試験を決め、対応するテキストを自分の言語で入手してください。サンプル問題のPDFも公式サイトに掲載されているので、問題の形式を早めに確認しましょう。
| テキスト | 対象 | 主な構成 |
|---|---|---|
| 耕種農業テキスト | 耕種農業試験の受験者 | 日本農業一般、耕種農業一般、安全衛生、稲作作業、畑作・野菜作業、施設園芸作業、果樹栽培作業、農作業の用語 |
| 畜産農業テキスト | 畜産農業試験の受験者 | 畜産の特徴(酪農・肉用牛・養豚・養鶏など)、家畜と飼料の基礎知識、日常の家畜の管理作業 |
| 日本語テキスト | 両試験共通 | 文字、数字、名詞、動詞、形容詞、疑問詞、あいさつ、総合練習(音声ファイル付き) |
出典について: 学習用テキスト – 農業技能測定試験(1号試験) — asat-nca.jp/asat1/textbook; 農業技能測定試験テキスト 耕種農業全般 日本語版 Ver1.1(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_CF_jpn2.pdf; 農業技能測定試験テキスト 畜産農業全般 日本語版 Ver1.2(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_LF_jpn3.pdf
耕種農業の基礎:土・水・肥料の基本を押さえる
耕種農業テキストの前半は、作物の育ち方と土・水・肥料の基本です。まず用語と「なぜそうするか」の理由をセットで覚えるのが近道です。
種が芽を出す発芽には、水・温度・酸素が必要で、これを発芽三条件といいます。覆土(土をかけること)はこの条件を整えるための作業で、光が当たると発芽しやすい種子は薄く、発芽しにくい種子は厚くかけます。
土については、日本の作物の多くはpH5.5〜6.5が生育に適しているとされています。肥料の三要素は窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)です。かん水は夏は主に午前中と夕方、冬は午前中に行い、水のやりすぎは根が腐る原因になるため、作物の生育と土の状態を見ながら行います。
同じ畑で同じ作物を続けると病害虫が出やすくなり収穫量が落ちることがあり、これを連作障害といいます。対策として、違う種類の作物を周期的に栽培する輪作などが挙げられています。
- 短いドリル:種を100粒まいて84粒発芽したら、発芽率は?→ 84÷100で84%です。「発芽した数÷まいた数」の割合計算に慣れておきましょう。
- 短いドリル:かん水の時期→夏は主に午前中と夕方、冬は午前中。理由とセットで覚えると混乱しにくくなります。
出典について: 農業技能測定試験テキスト 耕種農業全般 日本語版 Ver1.1(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_CF_jpn2.pdf
練習問題1:畑の面積と株数を区別して計算する
面積と株数は、どちらも掛け算で出せますが、単位も意味も別の数量です。取り違えやすいこの2つを、同じ数字が出る例で確かめます。
栽培管理の問題では「畑はどれだけの広さか」「何株植えられるか」を別々に答えさせられることがあります。次の練習問題で、単位まで正確に答える習慣をつけましょう。
練習問題
幅8メートル、長さ12メートルの長方形の畑があります。この畑に、うねを12列にわたり、各列に8株ずつキャベツを定植します。(1)畑の面積は何平方メートルですか。(2)定植する株数は全部で何株ですか。
答えと解説
(1)96平方メートル(2)96株
(1)面積=長さ×幅なので、12×8=96平方メートルです。(2)株数=列数×各列の株数なので、12×8=96株です。ここでは偶然どちらも96になりますが、「平方メートル」と「株」は別の単位で、意味も違います。問題文が「面積」を聞いているのか「株数」を聞いているのかを、答える前に必ず確認してください。
出典について: 農業技能測定試験テキスト 耕種農業全般 日本語版 Ver1.1(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_CF_jpn2.pdf
肥料の計算:成分量から製品量を出す
施肥の計算の要点は、「成分として必要な量」から「実際にまく製品の量」へ換算することです。教科書の式を使って練習します。
肥料袋には成分の含有率が示されています。計算では、必要な成分量と製品全体の質量を区別します。例えば、質量に占める割合が10%なら、製品質量に0.10を掛けたものがその成分量です。成分の表示方法も確認し、違う表示基準の数値を混ぜないようにします。
また、肥料を与えすぎると土中の塩類濃度が高くなって作物の生育に障害を起こすことがあり、塩類濃度はEC(電気伝導度)を測って調べると教科書にあります。「量が多いほど良い」ではない点に注意してください。
練習問題
【仮定の計算練習】ある区画に必要な窒素の量を3kgと指定されたとします。使用する製品の窒素含有率は質量で10%です。この条件だけを使うと、製品は何kg必要ですか。これは計算用の仮定であり、実際の作物への施肥量の指示ではありません。
答えと解説
30kgです。
製品の質量をXkgとすると、窒素の量は0.10Xkgです。0.10X=3から、X=3÷0.10=30kgとなります。製品3kgでは窒素は0.3kgなので、成分量と製品量は同じではありません。実際の施肥は、土や作物の状態と指定された基準を確認して行います。
出典について: 農業技能測定試験テキスト 耕種農業全般 日本語版 Ver1.1(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_CF_jpn2.pdf
畜産農業の学習:家畜の観察と記録
畜産農業テキストは、酪農(乳用牛)・肉用牛・養豚・養鶏など分野ごとの特徴、飼料の基礎知識、日常の管理作業を学ぶ構成です。日常の仕事では観察・記録・報告の姿勢が土台になります。
牛、豚、鶏では、飼養の目的や日常の管理内容が異なります。自分が従事する家畜の章を読み、飼料、飲水、環境、健康状態のどこを観察するか整理してください。ある家畜について示された温度や量を、すべての家畜の一律の基準にしないことが大切です。
管理作業については、テキストに「管理作業と家畜の観察の要点」の章があります。現場では、えさや水の量、ふんや尿のようす、元気の有無などを毎日観察し、変化を記録として残すことが基本です。変化を見つけたときは、自分で病名を決めたり治療を始めたりせず、農場の責任者に事実として報告します。
練習問題
あなたは養豚場で、毎日3つの豚舎(A・B・C)の豚の飲水量を記録しています。3日間の記録は次のとおりです。A舎:25L→20L→17L、B舎:24L→24L→25L、C舎:26L→25L→26L。飲水量の変化を見て、あなたが最初にすべきことはどれですか。①A舎の飲水量が減っていることを、記録をもとに農場の責任者に報告する ②自分で病名を判断し、治療を始める ③飲水量は参考記録なので、書かずに済ませる
答えと解説
①
最初にすべきは、記録に残った事実(A舎の飲水量が3日で25Lから17Lへ減少)を責任者に伝えることです。B舎とC舎は大きな変化がないことも、あわせて確認できます。病名の診断や治療は自分の判断で行うものではなく、責任者や獣医師の指示に従います。②は自分で診断・治療をしようとする誤りで、③は記録を続けない誤りです。観察→記録→報告の順序を、この例題の流れで覚えてください。
出典について: 農業技能測定試験テキスト 畜産農業全般 日本語版 Ver1.2(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_LF_jpn3.pdf
日本語の練習:作業指示を正確に聞き取る
試験の日本語問題は音声で出題されるため、時間や否定を含む指示を聞き間違えないことが大切です。ここでは、音声を使わない書き起こし文を使った練習として用意しました。
※この練習は音声を使わない、書き起こし文を使った日本語練習です。本番は音声で聞くため、練習のあとは必ず公式テキスト付属の音声ファイルでも同じ練習をしてください。
現場の指示には「午前中に」「3時までに」のような時間表現と、「〜しないでください」のような否定がよく出ます。この2つを取り違えると、作業の時期や内容そのものがずれてしまいます。
練習問題
リーダーの森さんが次のように言いました(書き起こし文)。「午後3時までに、資材を倉庫に運んでください。雨が降っていたら、運ばないでください。」(1)資材を運ぶ締め切りは何時ですか。(2)雨のときはどうしますか。
答えと解説
(1)午後3時(15時)までです。(2)雨のときは運びません。
(1)「までに」は期限を表し、締め切りは15時です。(2)「運ばないでください」は否定で、雨の日は運ぶ作業をしません。誤って「3時に運び始める」「雨でも運ぶ」と理解すると、作業の時期や内容がずれます。公式の日本語テキストでは、数字を含む表現と、動詞のさまざまな変化形を含む表現が重要とされています。書き起こしで意味を確かめたら、音声ファイルで耳からも確認してください。
出典について: 農業技能測定試験 日本語テキスト 耕種農業・畜産農業共通 日本語版(PDF) — asat-nca.jp/jp/images/ASAT_JP_jpn2.pdf
学習の進め方と受験前のチェックリスト
進め方の基本は、①試験の種類を決める→②自分の言語の公式テキストで範囲を学ぶ→③日本語テキストと音声で聞く練習→④サンプル問題で形式を確認、の4段階です。
本稿の例題(面積と株数、発芽率、施肥量、観察記録、作業指示)は、各分野の基礎の確認用として何度も解き直してください。学習範囲の全容は公式テキストそのものに収録されているので、本稿で触れていない章も必ずテキストで読み込みましょう。
受験前には、公式の国別試験情報と申込先で日程・会場・当日の案内を確認します。実施要領の試験水準にある「経験者の7割程度が合格」は受験者の合格割合についての説明で、必要得点が70%という意味ではありません。
- 受ける試験を決める:耕種農業か、畜産農業か。どちらにも日本語問題が含まれます。
- 自分の言語の学習テキストを公式サイトからダウンロードする。
- 日本語テキストと音声ファイルで、数字や動詞の変化形を聞き取る練習をする。
- サンプル問題のPDFで、問題の形式を早めに確認する。
- 出題数・試験時間・合格基準・日程・申込方法は、公式サイトで最新情報を確認する。
出典について: 学習用テキスト – 農業技能測定試験(1号試験) — asat-nca.jp/asat1/textbook; 試験の目的とメリット – 農業技能測定試験 — asat-nca.jp/asat1/overview/purpose; 全国農業会議所 農業技能測定試験実施要領(公式ページ掲載) — https://www.nca.or.jp/upload/procedure_for_the_asat_jp.pdf
出典について
事実確認の範囲:
