1号漁業特定技能評価試験は、漁業と養殖業の2系統に分かれ、学習の中心は発行元が無料公開する学習用テキスト(一般・安全・専門)です。受験できるのは特定技能での就労を希望する外国人で、日本語はJFT-BasicまたはJLPT N4以上が条件の一つになります。本稿では試験の位置づけ、形式と申込、テキストの分野別勉強法、解答つき演習を解説します。最初の一歩は、目指すのが漁業か養殖業かを決め、対応するテキストを公式サイトからダウンロードすることです。
この試験の位置づけと受験できる人
この試験は、在留資格「特定技能」の漁業分野で働くための条件の一つです。日本人は受験対象外で、就労を希望する外国人が対象になります。
在留資格「特定技能」は、人手不足に対応するため2019年4月に導入された制度です。漁業(養殖業を含む)分野で特定技能1号になるには、1号の試験に合格するか、漁業分野の2号技能実習を良好に修了していることが条件とされています。
日本語の条件もあります。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)N4以上です。技能試験と日本語試験は役割が別々で、どちらも条件になります。学習計画では、テキスト学習と日本語学習を並行して準備してください。
試験の合格は条件の一部です。在留の可否は、出入国在留管理庁への申請と審査によって決まります。合格すれば在留が自動的に認められるわけではない点に注意してください。
出典: 在留資格「特定技能」漁業特定技能評価試験について|大日本水産会 — 受験条件・試験の実施情報・学習用テキストの各節
漁業と養殖業、どちらのコースを選ぶか
試験と学習用テキストは「漁業」と「養殖業」の2系統に分かれます。自分が従事する業務に近い方を選ぶことが学習の近道です。
漁業コースのテキストは「漁業一般」「漁業安全」「漁業専門(網関係)」「漁業専門(釣関係)」の構成です。網を使う漁業と釣りによる漁業で、専門分野が分かれています。
養殖業コースは「養殖業一般・安全」「養殖業専門(給餌養殖関係)」「養殖業専門(無給餌養殖関係)」です。給餌養殖は池や生け簀の魚やエビに餌を与えて育てる方式で、ブリ、マダイ、クルマエビなどが代表的です。無給餌養殖は餌を直接与えず、天然の栄養塩や餌を利用する方式で、マガキ、ホタテガイ、ノリ、ワカメ、コンブなどが該当します。
どちらを受けるか迷うときは、受入れ予定の現場が網・釣りの漁業か、養殖か、また養殖なら餌を与える方式かをまず確認してください。テキストの構成がそのまま学習範囲になります。
出典: 在留資格「特定技能」漁業特定技能評価試験について|大日本水産会 — 受験条件・試験の実施情報・学習用テキストの各節; 漁業技能測定試験(養殖業)学習用テキスト(一般・安全関係) — 総論〜漁業基礎知識
試験の形式と申込の流れ
受験する分野と実施地に応じて、公式サイトで方式を確認します。大日本水産会はCBTとペーパーテストの実施案内を公開しています。
日程と方式は開催案内によって異なります。自分の分野、国・会場、受験日を選んで最新案内を確認し、公式ページから申込先へ進んでください。CBTには操作体験版も用意されています。
出典: 在留資格「特定技能」漁業特定技能評価試験について|大日本水産会 — 受験条件・試験の実施情報・学習用テキストの各節
公式テキストと出題例の入手方法
学習の中心は、大日本水産会が無料公開する学習用テキストです。公式の過去問や問題集は販売されていないため、テキストと公開されている出題例で学習します。
テキストは発行元サイトから無料でダウンロードできます。漁業は日本語・インドネシア語・英語、養殖業はさらに中国語・ベトナム語でも提供されています。自分に読みやすい言語版を選んでください。
発行元は、過去問や問題集を作成・販売していないと明記しています。市販の「過去問」を名乗る教材には注意が必要です。代わりに「出題例(サンプル問題)」が公式に公開されているので、問題の形式をつかむのに活用してください。
安全衛生については、厚生労働省が公開する漁船・養殖業従事者向けの教材も勉強するよう案内されています。これも無料で入手できます。
出典: 在留資格「特定技能」漁業特定技能評価試験について|大日本水産会 — 受験条件・試験の実施情報・学習用テキストの各節
漁業コース:一般知識の範囲と押さえ方
漁業一般テキストは、生産量や魚種の基礎から漁船・航法・ロープ・漁労機器・魚探まで幅広い内容です。まず全章を一読し、名称と役割を図と結びつけて覚えます。
章立ては、世界と日本の漁業・養殖業生産量、日本で漁獲される主な魚、漁船(各部の名称)、漁船の乗組員、コンパス・海図・航法、海流と大陸棚、漁業用語、網地、ロープの結びと端の処理、釣針、漁労機器、漁業計測機器です。
具体例を紹介します。航海灯の色は、マスト灯と船尾灯が白、左舷灯が赤、右舷灯が緑です。舵の言葉も重要で、面舵は舵を右に、取り舵は左にとることです。乗組員の役割では、漁労長が操業全体の責任者、船長が船の運航の責任者、機関長がエンジンや冷凍機などの責任者とされています。
魚群探知機(魚探)は、超音波の反応を色で表示します。強い反応は赤やオレンジ、弱い反応は青や緑で、魚群は雲のような塊、一匹の魚はブーメランのような形に映ります。このように、各章とも「名称と役割の対応」が問われやすい内容です。
数字の読み取りも練習しておきましょう。次の例題は水揚げ記録の基本である、総重量と正味重量の区別を確かめるものです。
演習
【仮定の例題】ある日の水揚げで、魚を入れた発泡スチロールの箱を12箱扱いました。各箱は「中身の魚+箱」を合わせた総重量が8kgで、空の箱1個の重さは1kgです。この日の魚だけの重さ(正味重量)は何kgですか。
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84kgです。12箱×(8kg−1kg)=12×7=84kg。
総重量8kgには箱の重さ1kgが含まれているため、1箱あたりの魚は7kgです。12箱で84kgになります。12×8=96kgと計算してしまうのは、箱の重さ(風袋)を差し引いていないための誤りです。水揚げ記録では、総重量と正味重量を区別して扱うことが基本になります。
| 章(テーマ) | 押さえたい要点 |
|---|---|
| 漁船と乗組員 | 各部の名称、航海灯の色(マスト灯・船尾灯は白、左舷灯は赤、右舷灯は緑)、漁労長・船長・機関長らの役割分担 |
| コンパス・海図・航法 | 羅針図の真方位と磁方位、海図の底質記号(S:砂、M:泥、R:岩)。実際の操船は資格・役割と航行条件に応じた指示に従う |
| 海流・大陸棚・漁業用語 | 暖流の黒潮と寒流の親潮、赤潮や湧昇流が漁業に与える影響 |
| 網地とロープワーク | 結節網と無結節網の違い、かえるまた結節、用途別の結び(もやい結び、まき結びなど) |
| 漁労機器 | 漁法ごとの主な機械(延縄のラインホーラー、刺し網の揚網機、まき網のパワーブロックなど) |
| 漁業計測機器 | 魚探の色と反応の読み方、航海プロッターに映る自船位置と航跡 |
漁業コース:安全分野で確実に得点する
安全テキストの柱は、保護具と服装、甲板での行動、安全標識、事故防止、海中転落時の対応です。「上か下か」など言い換えると混乱しやすい規則は、そのまま覚えます。
保護具では、安全帽はまっすぐかぶりあごひもをしっかり結ぶこと、作業着は身体に合った長袖で、上着のすそはズボンに入れ、袖のボタンを留めて機器への巻き込みを防ぐことが示されています。スリッパやサンダルは滑りやすく足を守れないため使いません。マストなど高所作業や舷側に体を乗り出す作業では、安全ベルトと命綱を装着します。
ライフジャケット(救命胴衣)には固型式と膨張式があります。甲板作業では作業用救命衣・救命胴着を装着しますが、着る位置が重要です。カッパや防寒着を着る日は、必ずその上に着装します。
行動の規則では、操業や作業以外で日没後に甲板へ出ると海中転落の危険が増えるため、むやみに一人で出ず、夜間に出るときは必ず他の乗組員に伝えること、舷側に腰かけたり登ったりしないことが挙げられています。黄色と黒に塗られたロープ(トラロープ)は危険な場所に張られるものです。
海中転落への備えとして、救命設備の位置、通報方法、船内での役割を訓練で確認します。実際の救助や落水時の動作は、船の手順と専門の訓練に従って学びます。この紙上のガイドを実技訓練の代わりにはできません。
着装の位置を問う問題は、理解の確認に向いています。次の演習で確かめてください。
演習
問題:雨の日の甲板作業でカッパを着ます。ライフジャケットはどのように着用するのが正しいですか。ア:カッパの下に着る。イ:カッパの上に着る。ウ:カッパが防水なので着なくてよい。
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イ:カッパの上に着るのが正しいです。
安全テキストは、ライフジャケットをカッパの下に着ると、落水したとき海中で異常な浮力形状になり、息ができなくなったり首が締められたりして危険な状態になることがあると説明し、必ずカッパの上に着装するよう求めています。アはこの危険に当てはまる誤りです。ウが誤りなのは、甲板や水上での作業では作業用救命衣・救命胴着の着用が基本とされているためで、防水服は浮力の代わりになりません。
出典: 漁業技能測定試験(漁業)学習用テキスト(安全関係) — 目次および各章(一部改訂2025年9月); 漁業技能測定試験(漁業)学習用テキスト(漁業一般関係) — 目次および各章(一部改訂2025年9月)
養殖業コース:給餌の有無と資源管理の考え方
養殖業テキストは、餌を与える給餌養殖と与えない無給餌養殖に分かれます。資源をとり過ぎず管理する考え方と、密度・給餌・赤潮対応の基本を押さえます。
無給餌養殖は、垂下式のように養殖する生物をロープにつけて吊るしたり網に入れたりして、天然の栄養塩や餌を利用して育てる方法です。給餌養殖は、陸上の池や水面の網生簀の中の魚やエビに餌を与えて育てる方法で、クルマエビ、ヒラメ、ウナギ、マス類、ブリ、マダイなどが挙げられています。
養殖では、対象の生物と施設に応じて、種苗、飼育数、餌やり、網の管理などを学びます。種苗には天然種苗と人工種苗があります。漁業権などの制度は施設や場所によって確認すべき条件が異なるため、ここでは具体的な許可要件を一律に扱いません。
テキストは資源管理の考え方も説いています。水産物をいつまでも利用するには海を大切にし、とり過ぎないこと。漁業で獲りすぎないよう資源を管理し続けることが、安定した種苗の確保につながると説明されています。
給餌率は魚種、大きさ、水温、健康状態などによって変わります。与えすぎによる残餌は水質や底質に影響するため、決められた計画に沿って観察・記録します。特定の密度や給餌率を、どの生け簀にも同じ基準として当てはめないようにしましょう。異常な水の変化などに気づいた場合は、責任者へ状況を報告します。
給餌量の計算は、割合の読み取りを確かめる練習に適しています。次の例題に取り組んでください。
演習
【仮定の演習】ある生け簀の魚の総重量を1,000kgとします。当日の給餌率を魚の体重に対して1.5%と仮定すると、1日の給餌量は何kgになりますか。なお、この数値は計算練習用の仮定であり、実際の給餌率は魚のサイズ・水温・健康状態などで変わります。
答えを見る
15kgです。1,000kg×0.015=15kg。
給餌率は「魚の体重に対する餌の割合」なので、総重量に割合を掛けると給餌量が求まります。ただし、この値はあくまで演習用の仮定で、実際の給餌量をこの計算だけで決めてよいわけではありません。テキストも、給餌率は水温や魚の健康状態などさまざまな条件で変化し、与えすぎると飼料効率が悪くなり、残餌が水質や底質を悪化させると注意を促しています。
出典: 漁業技能測定試験(養殖業)学習用テキスト(一般・安全関係) — 総論〜漁業基礎知識; 漁業技能測定試験(養殖業)学習用テキスト(給餌養殖関係) — 飼育環境〜マダイの養殖
学習の進め方と次の一歩
公式テキストを主軸に、一般・安全を先に通読し、専門テキストで仕上げます。日本語試験(JFT-Basic または JLPT N4以上)は別途、準備が必要です。
おすすめの順序は次のとおりです。この順序は学習の進め方の提案であり、公式に定められた要件ではありません。まずコース(漁業か養殖業か)を決めてテキストをダウンロードし、一般と安全を先に読み通します。次に専門テキストで自分の業務に近い分野を仕上げ、公開されている出題例とCBT体験版で問われ方と操作に慣れます。
理解の確認は「テキストを見ずに説明できるか」を目安にしてください。本稿の演習を解き直すほか、航海灯の色や乗組員の役割、ライフジャケットの着装位置など、取り違えやすい項目を声に出して説明してみてください。説明が詰まった箇所が弱点です。
日程・会場・申込方法は変更される可能性があるため、必ず発行元(大日本水産会)のページと申込先サイトで最新情報を確認してから申し込んでください。
- コースを決め、対応する学習用テキストを発行元サイトから無料でダウンロードする
- 一般・安全テキストを先に通読し、名称・役割・着装規則を図と一緒に覚える
- 専門テキスト(網・釣、または給餌・無給餌)で自分の業務に近い分野を仕上げる
- 公開されている出題例とCBT体験版で問題の形式に慣れる
- JFT-Basic または JLPT N4以上の日本語試験を別途、準備・受験する
出典: 在留資格「特定技能」漁業特定技能評価試験について|大日本水産会 — 受験条件・試験の実施情報・学習用テキストの各節; 漁業技能測定試験(漁業)学習用テキスト(漁業一般関係) — 目次および各章(一部改訂2025年9月); 漁業技能測定試験(漁業)学習用テキスト(安全関係) — 目次および各章(一部改訂2025年9月)
出典
事実確認済み:
