このガイドは造船・舶用工業分野の特定技能1号試験を中心に扱います。対象の6職種はそれぞれ別の試験で、学科と実技の両方に合格する必要があります。職種別の公式案内で作業内容を確認し、ここでは寸法の読み取り、作業指示の確認、不適合の報告を練習します。2号の形式や基準は別に確認してください。
この試験が確認するもの
特定技能の在留資格で造船・舶用工業分野に就労を希望する外国人の技能水準を評価する試験で、日本海事協会(ClassNK)が1号と2号を実施します。
造船・舶用工業分野特定技能試験は、日本の造船・舶用工業分野で特定技能の在留資格による就労を希望する外国人を対象に、技能の水準を評価する試験です。実施主体は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)で、所管は国土交通省です。
試験の水準は、「実務経験2年程度の人が、事前の試験準備をしないで受験した場合に7割程度合格できる」水準と定められています。つまり、現場経験があれば到達できる水準を確認する試験であり、高度な設計知識を問うものではありません。
大事な前提として、試験に合格しても、それだけで「特定技能」の在留資格が与えられる保証はないと実施要領に明記されています。在留資格の申請や審査は別途必要です。まずは技能試験として何を求められるかを正確に知ることが、準備の第一歩になります。
出典: 造船・舶用工業分野特定技能試験 | ClassNK — 試験の概要・実施案内・2026年受付終了のお知らせ; 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2
1号と2号、どの職種を受けるのか
1号は6職種、2号は3職種で、いずれも職種(業務区分)ごとに別々の試験として実施されます。
特定技能1号試験の対象職種は、溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立ての6つです。特定技能2号試験は、このうち溶接、塗装、鉄工の3職種を対象とします。
試験は業務区分ごとに行われます。たとえば「溶接」と「鉄工」は別の試験であり、学科も実技も職種ごとに受験します。まずClassNKのページで自分が受ける職種の受験案内を確認し、その職種の準備に絞り込みましょう。
本ガイドの試験事実は1号試験の実施要領に基づきます。2号試験の実技の詳細や合否基準は本稿では確認しきれていないため、必ず各職種の公式の受験案内で確認してください。
- 1号:溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組立て
- 2号:溶接・塗装・鉄工
- 学科も実技も、受ける職種ごとに別々に実施
出典: 造船・舶用工業分野特定技能試験 | ClassNK — 試験の概要・実施案内・2026年受付終了のお知らせ; 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2
学科と実技の形式、合格の条件
学科は60分・30問の真偽法(○×式)、実技は職種ごとの作業実技で、両方に合格すると技能試験の合格になります。
学科試験は、安全衛生と、各職種の作業全般に必要な知識・能力を確認します。試験時間は60分、問題数は30問で、真偽法(○×式)のペーパーテストです。合格基準は正答率60%以上です。
実技試験では、各職種の業務に必要な技能水準を実際の作業で確認します。学科と実技の両方に合格することで、はじめて技能試験全体の合格になります。
試験言語は日本語で、漢字には必要に応じてルビが付き、専門用語には他の言語が併記される場合があります。試験は原則として、学科と実技を同じ会場・同じ日に行います。
実施方法の特徴は「出張試験方式」です。受験者またはその所属する団体・企業(申請者)からの申請に基づき、ClassNKの試験監督者が希望する場所に出向いて実施します。申請者側が試験場所の確保や機械設備・試験用材料の準備を行う点に注意してください。
受験できるのは、試験日の時点で満17歳以上の人です。国内で受験する場合は在留資格を有する人が対象という条件もあります。
出典: 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2; 造船・舶用工業分野特定技能試験 | ClassNK — 試験の概要・実施案内・2026年受付終了のお知らせ; 特定技能1号試験(仕上げ)の実施 | ClassNK — 受験案内・学科サンプル・申請書類へのリンク
職種別の実技内容と合否の見方
各職種で求められる作業と、合否判定で見られるポイントは実施要領の別紙に定められています。代表例を表に整理します。
実技の詳細は職種ごとに別紙で定められています。たとえば溶接は、手溶接・半自動溶接・ティグ溶接のいずれかで、板材の突合せ溶接を行います。母材は普通鋼・ステンレス鋼・アルミニウム合金のいずれか、厚さは9mm以上、姿勢は「下向」、片面溶接(裏当てあり)です。
溶接については、ClassNKが交付した溶接士技量証明書を持っていて、指定された条件(方法・母材・姿勢など)をすべて満たし、申請時点で有効な場合は、その提示で実技試験が免除されます。自分の資格が免除条件に当てはまるか、受験案内で確認しましょう。
合否基準の共通点は「指示どおり仕上げること」と「指示以外の加工をしないこと」です。表は各職種の要点をまとめたもので、細部は各職種の受験案内を必ず確認してください。
| 職種 | 実技の主な作業 | 合否で見られる点 |
|---|---|---|
| 溶接 | 指定条件での板材の突合せ溶接 | 有害な割れ・ブローホール等の外観欠陥の有無、曲げ試験または放射線透過試験 |
| 塗装 | 素地調整、マスキング、塗装 | 塗りむら・ゆず肌の有無、指定以上の膜厚、マスキング箇所への塗料の付着の有無 |
| 鉄工 | けがき、ガス切断、曲げ、仮付け溶接を含む組立て | 切断個所のうねり、指定寸法内の組立て、仮付けの剥離の有無 |
| 仕上げ | 所定の精度への仕上げ加工と組合せ | 指定の表面粗さ・すき間、指示以外の加工の有無 |
| 機械加工 | 工作機械での切削加工 | 指示の寸法・精度、指示以外の加工の有無 |
| 電気機器組立て | 器具の取付、電線の圧着接続、配線 | 指示どおりの取付・配線、制御回路がある場合は指示どおり動作するか |
出典: 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2; 特定技能1号試験(仕上げ)の実施 | ClassNK — 受験案内・学科サンプル・申請書類へのリンク
仕上げの寸法判断を紙上で練習する
「指示の寸法・公差内に収める」ことと「指示以外の加工をしない」ことの両方を同時に満たす判断が、実技で繰り返し問われる考え方です。
実技の作業そのものは紙上では練習できませんが、寸法の読み方と加工の判断は用意できます。寸法や公差の読み取りは、ノギスやマイクロメータの使い方とともに、機械工作全般の基礎として学ぶ内容です(造船分野の公式シラバスではなく、一般の学習用参考テキストで補う部分です)。
次の練習問題では、実技試験の合否基準にある「指示以外の加工がなされていないこと」をどう守るかを考えます。答えと理由を必ず読んで、判断の順序を身に付けてください。
練習問題
仕上げ作業の練習で、作業指示は「指定面を20±0.1mmの寸法に仕上げること。指示箇所以外は加工しないこと。検査で範囲外だった場合の再加工は、責任者の許可を得てから行うこと」でした。仕上がった面を3か所測定したところ、19.95mm、20.05mm、20.14mmでした。(1) 公差の範囲内にある測定値はどれで、いくつあるか答えなさい。(2) 20.14mmだった箇所を、自分の判断でグラインダで削って範囲内に収めてもよいか。理由とともに答えなさい。
答えを見る
(1) 基準寸法20mmに対して公差は±0.1mmなので、範囲は19.9mmから20.1mmです。19.95mmと20.05mmの2か所が範囲内で、20.14mmは上限を超えており範囲外です。(2) いけません。この練習の作業指示では、検査後の再加工に責任者の許可が必要と明記されています。許可なしに追加加工すると、その指示に反します。実際の職場でも、指示が不明な場合は勝手に加工せず、指示を出した上司や責任者に確認・相談するのが正しい対応です。
20−0.1=19.9mm、20+0.1=20.1mmなので、19.95mmと20.05mmが範囲内、20.14mmは範囲外です。再加工をしてよいかは寸法だけで決めません。この問題では責任者の許可が必要という前提があるため、測定値を報告して確認します。指定面の修正がすべて一律に禁止されるという意味ではありません。
出典: 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2; 製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工区分)学習用参考テキスト — 第1章 試験の概要と学び方・第2章 安全衛生・第6章 測定(補助教材として参照)
品質の記録と報告を練習する
測定値は見たとおりに記録し、基準から外れた場合は手順に従って報告します。合格させたいという理由で値を書き換えてはいけません。
次は、記録と報告を読むためのオリジナル練習です。判定基準と対応手順は問題文で指定しており、実際の製品の基準ではありません。
練習問題
練習用の検査指示は「すき間0.20mm以下。超えた場合は品物を区別し責任者へ報告」です。測定値は0.24mmでした。同僚が「急ぐので0.20mmと記録しよう」と言いました。記録する値、判定、その後の対応を答えてください。
答えを見る
0.24mmと記録します。0.20mmを超えるため、この指定基準では範囲外です。指示どおり品物を区別し、責任者へ報告します。
実測値と判定基準は別です。基準に合わせて記録を書き換えても、実物の状態は変わりません。0.24−0.20=0.04mmの超過を事実として伝え、再加工や使用の判断は権限のある責任者に確認します。
出典: 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2; 特定技能1号試験(仕上げ)の実施 | ClassNK — 受験案内・学科サンプル・申請書類へのリンク; 製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工区分)学習用参考テキスト — 第1章 試験の概要と学び方・第2章 安全衛生・第6章 測定(補助教材として参照)
安全と職場の基本は参考テキストで補う
学科には安全衛生が含まれます。一般の機械工作の学習用テキストを「補助教材」として使うと、職場の基本ルールを効率よく学べます。
学科試験では安全衛生と各職種の作業知識が問われます。造船分野専用の公式教科書を本稿では確認できていないため、一般の機械工作を学ぶ人向けの参考テキストが役立ちます。これはあくまで補助教材であり、造船分野の公式シラバスではありません。試験範囲の最終確認は、ClassNKの受験案内と学科サンプルで行ってください。
参考テキストで学べる主題の例をまとめます。いずれも日本の製造現場で共通する基本であり、試験対策だけでなく就労後の安全にも直結します。
- 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)と三定:道具や材料の置き場所を決め、探す時間と事故の元を減らす職場の基本ルール
- ほうれんそう(報告・連絡・相談):異常や不明点を自分で抱え込まず、上司に伝える習慣
- 保護具の選び方:作業に合った保護具を選ぶこと。作業によっては、手袋が機械に巻き込まれる危険になる
- 危険予知トレーニング(KYT):イラストや状況から危険を見つけて対策を考える訓練
出典: 製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工区分)学習用参考テキスト — 第1章 試験の概要と学び方・第2章 安全衛生・第6章 測定(補助教材として参照)
受験の流れと次のステップ
試験は申請に基づき随時実施されます。2026年の受付は終了しており、2027年の受付再開はClassNKのホームページで案内されます。
受験は、受験者本人または所属する団体・企業がClassNKに申請して行います。試験は国内外で随時実施され、ClassNKが試験監督者を派遣する出張試験が原則です。申請者側は試験場所の確保、機械設備や試験用材料の準備などを行います。初めての場所で試験を申請する場合は、必要な設備の説明があるため、申請前に連絡することが案内されています。
ClassNKのホームページでは、2026年の特定技能試験の受付は終了したと案内されており、2027年の受付再開については同ページで改めて案内されるとしています。試験によっては、ClassNKが会場や設備を用意して指定日時に実施する場合もあり、その場合も同ページで告知されます。
各職種の受験案内、試験詳細、受験申請、学科サンプル(仕上げを確認)はClassNKのページから入手できます。不明点はClassNKの特定技能試験担当(交通物流部)に問い合わせてください。試験に合格しても在留資格の付与は別途の審査である点は、改めて確認しておきましょう。
- 自分の職種(1号か2号か含む)を確定する
- ClassNKの職種別ページで受験案内と学科サンプルを入手する
- 所属企業・団体と試験申請の方法と日程を相談する
- 2027年の受付再開案内をClassNKのページで確認する
- 溶接を受ける場合は、保有する技量証明書で実技免除になるか確認する
出典: 造船・舶用工業分野特定技能試験 | ClassNK — 試験の概要・実施案内・2026年受付終了のお知らせ; 造船・舶用工業分野特定技能1号試験実施要領(国土交通省海事局船舶産業課) — 試験概要・試験科目・合否基準・別紙1・別紙2; 特定技能1号試験(仕上げ)の実施 | ClassNK — 受験案内・学科サンプル・申請書類へのリンク
出典
事実確認済み:
